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ペルソナは意味がないのか|意味ある存在にするための基礎知識

ペルソナは、CX(顧客体験)デザインを考える上で極めて重要なツールです。しかし、その意義や用法について、誤解が多く見受けられることも事実です。
ペルソナをつくってみたけど、結局なんの意味も見いだせなかった。ペルソナなんか意味ないじゃないか…このような意見やペルソナ不要論が生じるのは何故でしょうか。
今回は、ペルソナを利用する際のよくある誤りと、正しい活用法についてまとめてみたいと思います。
ペルソナについては、過去にも記事を書いているので参考にしてみてください。

ペルソナとは

ペルソナは、特定の製品やサービスの理想的な顧客像を表現するための架空のキャラクターです。ペルソナは、顧客の属性、行動、ニーズ、好みなどの情報を基に作成され、特定の顧客セグメントを代表するキャラクターとして構築されます。

一般的に、ペルソナには名前や年齢、職業、家族構成などの基本的な属性情報が含まれます。さらに、ペルソナのバックストーリーや趣味、関心事、購買行動など、より具体的な詳細も加えられることがあります。

ペルソナ作成の失敗例

詳細に描かれたペルソナを、単一の代表像として提示されることがありますが、それはあくまで簡略化されたモデルであり、実際の顧客の多様性や個別の要求に対応するためには、より詳細な分析や個別のアプローチが必要です。

ペルソナはあくまで洞察を提供し、意思決定をサポートするツールであり、全ての顧客を網羅する唯一の解決策ではありません。ここでは、よくあるペルソナ作成の失敗例をご紹介します。

サンプリングの偏り

ペルソナを作成するためには、データを基に特定のセグメントを代表するキャラクターを作り上げますが、データ収集の際にサンプリングの偏りが生じる可能性があります。例えば、特定の地域や特定のデモグラフィックに偏ったデータしか持っていない場合、ペルソナが実際の顧客を適切に代表していない可能性があります。

過度な簡略化

ペルソナは理想的な顧客を表現するための簡略化されたキャラクターであるため、現実の多様性や複雑さを十分に反映しきれないという指摘があります。実際の顧客は多様なバックグラウンドやニーズを持っており、一つのペルソナでそれらを網羅することは難しい場合もあります。

予測の限定性

ペルソナは過去のデータに基づいて作成されるため、将来の予測に対して限定的であるとの主張もあります。市場や顧客の状況は変動するため、ペルソナが将来にわたって有効であるかどうかは保証されません。

インサイトの欠如

ペルソナを作成する際には、データに基づいた分析が重要ですが、それだけでは十分なインサイトが得られない場合もあります。データの背後にあるストーリーや顧客のモチベーションを理解するためには、より質的なリサーチや深い洞察が必要となることが指摘されています。

そもそもが売り手目線

最も顕著な失敗例としては、顧客のニーズや要求に焦点を当てることなく、単に自社の利益最大化を追求したペルソナを立てることです、このようなケースでは、ペルソナを売り手にとって都合良い、現実から乖離した人物像を仕立ててしまうために、顧客の真のニーズを見逃し、マーケティング効果や顧客満足度の低下につながる可能性があります。

ペルソナの意義と有用性

ペルソナの本来の有用性を理解することは重要です。ペルソナは、マーケティングや製品開発において洞察を提供し、意思決定をサポートするためのツールとして価値があります。ペルソナを作成することで、顧客セグメントの特徴やニーズを把握し、ターゲットとする顧客に合わせた戦略を立案することが可能になります。

ここからは、意義あるペルソナの作成法についてご紹介します。

データの収集

ペルソナを作成するためには、関連するデータを収集する必要があります。例えば、顧客のニーズや目的(もっとも重視している要素)、属性情報(ライフスタイル、年齢、性別、地域など)や行動データ(購買履歴、ウェブサイトの閲覧履歴など)が含まれます。このデータは、アンケート調査、ウェブ解析、購買データの分析などを通じて収集することができます。

セグメンテーション

データを分析して、顧客を異なるセグメントに分類することが重要です。セグメンテーションは、顧客の属性や行動に基づいて類似性のあるグループを作成するプロセスです。このプロセスによって、ペルソナを作成するための基礎となるセグメントを特定することができます。

ターゲティング

顧客を複数のセグメントに分類したら、その中でもっとも注視すべきセグメントをターゲットにします。ペルソナは複数立てることがありますが、この場合は異なるセグメント毎に代表するキャラクターとしてペルソナを作成します。

パターンの特定

ペルソナを作成するためには、セグメント内の顧客の特性や行動パターンを特定する必要があります。統計的手法を援用して、セグメントごとの共通の特徴や重要な要因を抽出することよいでしょう。

ペルソナの作成

ペルソナを作成する際には、得られたデータと特定のセグメントの特徴を基に、具体的なキャラクターを設定します。ペルソナには、顧客の属性情報、行動パターン、ニーズや目標、好みなどの詳細が含まれます。データから抽出した情報をもとに、ペルソナの物語や特徴を作り上げることが重要です。

ペルソナの検証と改善

作成したペルソナが実際の顧客に適用可能かどうかを検証することも重要です。実際のデータと比較して、ペルソナの特徴や行動パターンが一致するかどうかを確認し、必要に応じて改善を行います。

ペルソナの活用の注意点

ペルソナはマーケティング活動の効率化やパーソナライズされたアプローチの実現に役立ちます。顧客の心理や行動パターンを理解することで、より効果的なメッセージや提案を行い、顧客の関心を引きつけることができます。

そのため、ペルソナを利用する際には、その限界を認識しながらも、適切な文脈で活用することが重要です。ペルソナは単独の解決策ではなく、他の情報や手法と組み合わせて使用することで、より包括的な顧客理解を促進することができます。また、ペルソナは常に進化し続けるべきであり、顧客との接触やフィードバックを通じて改善を図ることが重要です。

Summary

結論として、ペルソナはマーケティング戦略の一部として有用なツールであると同時に、その制約や誤解も存在することを理解しましょう。適切に活用することで、より効果的な顧客対応や戦略策定が可能となります。
顧客の視点から製品やサービスを開発・提供し、長期的な顧客関係の構築や持続的なビジネス成果の実現につなげていきましょう。