知識

メディアイズメッセージ|デザインとブランディングもメッセージ

私たちはターゲットにメッセージを届けるために、様々なメディアを選択し情報を発信します。

 

しかし、情報が単なる情報である以上に深く理解され、メッセージとして届くためには、その背後あるいは視覚上にデザインの力が必要不可欠です。

 

本稿では、メディアとデザインがいかにしてメッセージを構成するのかを考察します。そして、このメッセージが構成されるメカニズムが、ブランディングと密接な関係を持つことを明らかにすることを試みたいと思います。

メディアとデザインとブランド

デザインは情報を組織化し、魅力的に表現する手段です。情報を効果的に伝えるためには、優れたデザインがメッセージを引き立て、視覚的な印象を形成します。

一方、メッセージを届けるメディアを選択する事も重要です。ターゲットに効果的にリーチ出来ることが選定理由ですが、メディアにはそれぞれ性質があり、それぞれのメディア自体が意味を持ちます。

これらのメッセージが一貫性を持つ場合、それはブランドイメージを構築する力を持ちます。一つ一つのメッセージは単なる瞬間のコミュニケーションに過ぎないかもしれませんが、全体としての一貫性を保つことで、ブランドは独自の特徴と価値を持つ存在として認識されます。

この一貫性を活用したアプローチこそがブランディングの鍵であり、ブランドの持つメッセージを広範な観客に伝え、結びつきを築く手段なのです。

メディアはメッセージ

カナダのメディア理論家であるマーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)のメディア論(1960年代)によれば、我々が情報を伝える手段であるメディア自体が、我々に与える影響やメッセージの形成に大きく影響を与えます。

The Medium is the Message(メディアはメッセージ)

マクルーハンは「The Medium is the Message(メディアそのものがメッセージである)」という有名なフレーズを提唱しました。このフレーズは、彼のメディア理論の中心的な概念の1つです。

このフレーズの意味は、メディアそのものの特性や形式が、伝えられる内容や情報以上に重要であり、人々の思考や文化、社会に大きな影響を与えるというものです。言い換えれば、メディアの形式や特性が情報に与える影響が、伝えられる具体的な内容よりも重要であるという主張です。

この考え方によれば、異なるメディアの特性が、情報の受容方法や意味の理解に影響を与えるため、同じ情報であってもメディアの違いによって異なるメッセージが伝わることがあるとされます。これは、メディアが文化や社会の形成に与える影響についてのマクルーハンの重要な見解の1つです。

マクルーハンはまた、クールメディアとホットメディアのアイディアを探求しました。彼の見解によれば、異なるメディアは情報の伝達や受容において異なる影響を持ち、クールメディアとホットメディアのスペクトラム上に位置付けられると述べています。

Cool Media(クールメディア)

クールメディアは、情報伝達時に受け手に対して多くの穴や余白を持ち、情報を理解するために受け手の積極的な参加や解釈が必要なメディアを指します。

つまり、情報が鮮明に提示されず、受け手の想像力や知識が活用されるメディアです。低精細度で高参与性という特長があるとされます。

例としては、テレビ、漫画、電話や対談などが挙げられています。情報を迅速に伝えることができますが、情報の深い理解や考察は限られることがあり、受け手が自分で情報を補完する必要があります。

Hot Media(ホットメディア)

ホットメディアは、情報伝達時に受け手に対して多くの情報を提供し、受け手の参加や解釈が相対的に少なくても十分な情報が提供されているメディアを指します。

具体的な詳細や情報が鮮明に提示されており、受け手は比較的容易に情報を受け入れることができます。高精細度で低参与性という特長があるとされます。

例としては、ラジオ、写真、映画、書物などがあります。情報伝達のスピードは比較的遅いですが、情報の深い理解や考察が可能です。

デザインはメッセージ

情報を効果的に伝えるためには、デザインが不可欠です。デザインは情報の体系化や整理、視覚的な印象の形成を担当し、メッセージの明確さや効果を向上させます。デザインは単なる装飾ではなく、情報の伝達において本質的な役割を果たす要素です。

情報の構造化|デザインが伝える体系

デザインは情報を整理し、階層的な構造を作る手段です。適切なレイアウトや配色、フォントの選択などは、受け手に情報を読みやすく伝えるための基盤となります。デザインが情報を的確に構造化することで、読者は主要なポイントや関連する情報を効果的に把握することができます。情報を適切に整理するデザインは、メッセージの明確さを強調し、受け手の理解を支援します。

視覚要素の援用と関連付け|メッセージの補完と印象形成

デザインは視覚的な要素を駆使して、情報を補完し、印象を形成します。画像やアイコンの選択、色の使用、視線誘導などは、メッセージの補足や強調に寄与します。さらに、視覚要素は情報と感情の関連性を醸成し、受け手に深い印象を与えます。デザインが情報と視覚的な要素を結びつけることで、メッセージはより多面的で魅力的なものとなります。

文脈や言外の意味との関連性|デザインの隠されたメッセージ

デザインには文脈や言外の意味を効果的に伝える力があります。背景色やレイアウトの配置、要素の配置などが、情報の文脈を形成し、隠された意味を示唆します。デザインが織り込むこの種のサブテキストは、受け手にメッセージの奥深さを伝える重要な要素です。デザインが意図的に文脈や言外の意味との関連性を持つことで、メッセージは複層的な理解を促進します。

ブランディングはメッセージ

ブランディングは、異なるメディアやデザインを通じて伝えるメッセージに一貫性を持たせる重要な手段です。単一のロゴやスローガンだけでなく、全体としてのブランドイメージを構築するために、さまざまな要素が組み合わさります。ブランディングは、一貫性のあるデザインやトーンを用いて、消費者に特定の価値観やエモーションを伝え、ブランドの持つメッセージを確立します。

ブランドは消費者に対して特定の価値観やエモーションを伝え、商品やサービスだけでなく、ブランド自体が持つメッセージが重要です。ブランディングは継続的なコミュニケーションと一貫性を通じて、顧客との結びつきを強化します。

逆に言えば、ブランドとは複数のメッセージが構成するメタ・メッセージであり、これらを言語化していくのがブランディングであると言えるのではないでしょうか。

メタ・メッセージとは何か

メタ・メッセージとは、表面上のメッセージの裏に潜む、隠れた意味やメッセージのことを指します。これは、単なるテキストやイメージの意味だけでなく、コンテキストや非言語的な要素によって伝えられる、より深いレベルのメッセージです。メタ・メッセージはしばしば間接的であり、受け手に感情や思考を呼び起こすことがあります。

メタ・メッセージのデザイン

デザインにおいて、メタ・メッセージは視覚的な要素やデザインの構造を通じて伝えられます。背景色、フォントの選択、アイコンの配置など、これらのデザイン要素は表面上の情報の裏にある意味や価値観を示唆することがあります。例えば、明るい色彩や親しみやすいフォントは、友好性やポジティブな感情を連想させることがあり、それ自体が裏にあるメッセージを伝える形となることがあります。

デザインされたメタ・メッセージ

また、ブランディングや広告の文脈において、意図的にデザインされたメタ・メッセージも存在します。これは、メッセージをより深く理解し、消費者に感情的なつながりを生み出すためにデザインされた要素です。例えば、企業が持つ価値観や社会的な貢献への取り組みを視覚的に表現することで、消費者に対して持続可能性や社会的な意識を伝えることができます。

メディアとはミーディアム

メディア(media)は、ラテン語の「medium」(中間、媒体、手段などを意味する)から派生した語で、さまざまな情報やコミュニケーションを伝達するための手段や媒体を指します。
すなわちメディアとは、テキスト、音声、画像、動画、コード、シンボルなどの形式を通じて情報を伝達するための道具やプラットフォームを指しています。

mediaとmedium

メディア(media)の概念は、情報を伝達する手段や媒体としての意味だけでなく、物質そのものを指すこともあります。

空気や水などの物質は、情報やエネルギーが伝わる媒体としても機能します。例えば、音波は空気を通じて伝わり、私たちの会話を支えています。空気の存在が環境光(アンビエントライト)をもたらし、私たちの視覚世界をもたらしています。

例えば、私たちが水中に入れば、空気の中のとは様相が一変してしまいます。媒質が変われば、見えるものや伝わるものの性質も変わります。

このような物質的な媒体は「medium」という言葉で表現されます。

メディアの性質を読むこと

ターゲットにリーチするメディアを選定するとき、メディアそのものの持つ性質や意味を考慮する必要があります。

たとえば、SNSが流行っているからSNS広告をやる、TikTokが流行っているからTikTokに動画をあげるというような発想がよくあります。しかし、そこにターゲットが居るとしても、メディアの性質に合わないメッセージであれば、おそらくそれはノイズにしかならないでしょう。

空気の中と水の中が違う様に、メディア(媒体)の性質によって伝わるものが異なるのです。そのメディアの中での見え方や聞こえ方がどうなるのか、洞察が必要です。

メディアの中での見え方や聞こえ方

異なるメディアは、情報の表現や受容に影響を与えます。テキスト、画像、音声、動画など、メディアの種類によって情報がどのように表現され、どのように受け手に届くかが変わります。例えば、SNSの短いテキストや画像は、瞬時にキャッチーで分かりやすいメッセージを求められますが、長い説明的な情報は適切に伝えづらい場合があります。

メディアの特性とターゲットの適合性

メディアはそれぞれ異なる特性を持ちます。視覚的な「エモい」を求めるインスタグラムやPinterest、サムネと動画構成が重要なYoutube、専門的な情報が共有されるLinkedInなど、それぞれのプラットフォームは異なる利用目的や受け手を持っています。ターゲット層に合ったメディアとデザインを選ぶことで、メッセージがより効果的に届きます。

メディアのトレンドと適切な選択

一時的なトレンドに左右されず、メディアの性質とターゲットに焦点を当てて選択することが重要です。特定のメディアが流行しているからといって、それが必ずしもターゲット層に適しているとは限りません。ターゲットの好みや行動パターンに基づいて、メディア選定を行うべきです。

メッセージの適合性と一貫性

選んだメディアが持つ性質に合わないメッセージを送ることは、効果的なコミュニケーションを阻害する可能性があります。メディアの性質とメッセージの適合性を検討し、一貫性を保つことで、ターゲット層に響くメッセージを伝えることができます。

ブランディング成功のカギはメディアとデザイン

ブランディングが成功するためには、メディアとデザインの性質を理解することが不可欠です。メディアの選択やデザインの要素は、ブランドメッセージの伝達に影響を与えます。利用するメディアの特性を読み解き、効果的なブランディング戦略を構築するために、これらの要素の重要性を理解する必要があります。

メディアに合わせた適切な表現

メディアの性質を理解し、その特性に合ったコミュニケーションを行うことが、効果的なブランディングの鍵です。テキスト、画像、動画、音声など、メディアごとに適切な情報の形式を選択し、ターゲット層の好みや利用習慣に合わせたアプローチを取ることで、メッセージが響きやすくなります。

インターネットというメディアは、その複雑性によってホットメディアとクールメディアの性質を同時に持つことがあります。情報の受け手は、異なるメディアの特性を読み取り、適切に解釈するスキルが求められます。インターネットの普及によって、我々の情報の消費方法とコミュニケーションがどのように変わっているかを理解することが重要です。

まずメディアの性質を把握して、適切なコミュニケーションを構成することが大切です、ホットメディアに対してはホットメディアの対応、クールメディアに対してはクールメディアの対応を考えます。インターネットの場合は、この性質が混在している事がありますが、土台はどちらで、どのようなきっかけ・タイミングで視聴されるのかを考慮します。

例えば、なんとなく眺めている時なのか、明確に意図をもって検索しているときなのか、それによって必要なコンテンツが異なる事は理解に難くないでしょう。

メタ・メッセージを考慮したデザイン、クリエイティブ

デザインは単なる視覚的な要素だけでなく、メタ・メッセージの伝達にも貢献します。
デザインが持つ意味や隠されたメッセージを通じて、消費者に深い印象を与えることが可能です。クリエイティブやデザインの選択において、ブランドの独自性や価値観、ストーリーを的確に表現し、消費者の心に響くコミュニケーションを実現することが重要です。

ブランディングの一体感を確立

メディアとデザインの統合によって、ブランディングの一体感を確立することが必要です。異なるメディアチャンネルやデザイン要素が、一貫性のあるメッセージを伝えることで、消費者に強い印象を与え、ブランドの認知度や信頼性を向上させることができます。

Summary

メディアとデザインは、ブランディング戦略の中核を成す要素です。メディアの特性とデザインの力を最大限に引き出し、ターゲット層の心に響くメッセージを創造することで、ブランドは差別化され、成功への道を拓くことができます。