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エクスペリエンスについて〜体験価値とは何か

近年では日本でもエクスペリエンス重視のマーケティングやサービス提供が増えており、顧客の感情や満足度を重視するアプローチが浸透してきています。顧客の感情や体験にフォーカスし、より良いエクスペリエンスを提供することが重要視されているのです。

 

しかし、一般にはまだまだエクスペリエンスという概念も語も浸透していませんし、耳慣れないカタカナ語に「?」という反応になってしまうのではないでしょうか。
ここでは、エクスペリエンスという概念について、またその有用性について、極力わかりやすい説明を試みます。

体験と体験価値

エクスペリエンス(Experience:体験)は、直訳すると「経験」という意味を持ちますが、ビジネスやマーケティングの文脈では、顧客が商品やサービスを利用する際の感情や感じ方、その体験に対する満足度を指します。つまり、製品やサービスを購入・利用することによって得られる感情や満足度のことを指します。

体験価値(Experience Value)は、エクスペリエンスそのものに対して個人が感じる価値のことを指します。これは主観的な要素であり、人によって異なる評価や感じ方があります。マーケティングの観点からも、個人の心理や感情に訴えかけることで、商品やサービスの魅力を高める重要な要素とされています。

エクスペリエンスという概念をわかりにくくする原因

エクスペリエンス=体験という直訳は知っていても、ユーザー体験や顧客体験という使い方になると、具体的に何を指しているのか理解しにくいという人も多いようです。

人によって異なる「感じた事」を対象にしているから

エクスペリエンスは、商品やサービスそのものの性能や機能だけでなく、その提供や販売方法、顧客の接客態度やコミュニケーション、購入前後のサポート体制なども含まれます。
つまり、製品やサービス自体の品質だけでなく、その提供プロセス全体が重要な要素となります。このように、体験価値は単一の具体的な要素を指すものではありません。
またエクスペリエンスの内容としても、体験の結果として顧客が感じる主観的な感情や評価を指すものであることから、更にわかりにくいという側面がありそうです。

文化的影響

その他にも、日本人にとって体験価値という語がわかりにくい要因として、伝統的な価値観や文化が影響している可能性があります。
日本の文化では、おもてなしの姿勢が慣習として備わっているため、価値提供に対する視点や考え方が他の国と異なるのかもしれません。そのため、顧客の感情や満足度といった要素とビジネスの成果との結びつきを評価することが難しいのかもしれません。

マーケティングにおける体験価値とは

マーケティングの文脈では、エクスペリエンスは顧客にとっての商品やサービスを利用する際の感情や感じ方、その体験に対する満足度を重視するアプローチを意味します。顧客がポジティブな体験を得ることで、ブランドに対する好感度が高まり、リピート購入や口コミ拡散につながることが期待されます。
欧米でエクスペリエンスという概念が注目されるようになった背景にはいくつかの要因があります。

消費の成熟化

欧米社会では、物質的な豊かさが高まった結果、消費者の需要が単なる商品の提供だけでは満たされなくなってきました。商品の性能や機能だけでなく、購入するプロセスや提供されるサービス、感情的な満足度を求める傾向が顕著になりました。

ライフスタイルの変化

欧米の多くの社会で、忙しい生活スタイルや仕事に追われる日々が増えています。そのため、時間の使い方や経験の重要性が強調され、価値観が変化してきました。エクスペリエンスを通じてリラックスや楽しさを追求することが重要視されるようになったのです。

ソーシャルメディアの影響

ソーシャルメディアの普及により、人々がエクスペリエンスを共有しやすくなりました。他の人の良い体験を知ることで、自らもより豊かな経験を求める動機が高まりました。また、エクスペリエンスを共有することで、自己アイデンティティの形成や社会的なステータスを示す手段となることもあります。

ミレニアル世代の価値観

ミレニアル世代(1980年代から2000年代生まれ)は、物質的な所有よりも経験と感情を重視する傾向が強い世代とされています。彼らの消費行動がエクスペリエンス志向に影響を与え、企業やブランドもこれに対応する必要性を感じた結果、エクスペリエンス重視のマーケティングが拡大しました。

これらの要因が重なり合い、欧米社会でエクスペリエンスが注目されるようになったと言えます。消費者のニーズやライフスタイルの変化に合わせて、企業やブランドがエクスペリエンスを重視し、顧客により満足度の高い体験を提供することが求められています。

近年では日本でもエクスペリエンス重視のマーケティングやサービス提供が増えており、顧客の感情や満足度を重視するアプローチが浸透してきています。顧客の感情や体験にフォーカスし、より良いエクスペリエンスを提供することが重要視されているのです。

個人にとっての体験価値とは

良いエクスペリエンス(価値ある体験、エクスペリエンスバリュー:体験価値)を得る事は、個人にとって喜びをもたらすものです。一方、体験価値は、その人の好みや価値観、目標、状況によって大きく異なります。例えば、冒険心のある人にとっては新しい挑戦や未知の経験が体験価値となり、一方で安定や安心を求める人にとっては日常の穏やかな瞬間や家族との時間が体験価値となるでしょう。

マインドセットと体験価値

このように、体験価値はマインドセットにより変わるという点も重要です。
例えば、成長マインドセットの人が初めて挑戦する未知の体験は、新たな学びと成長の機会として捉えられるかもしれません。成長を追求する上での困難や苦痛は必要な経験であり、そのことが自らの人生を満足に生きるための価値であると考えるでしょう。

一方、固定マインドセットの人は、未知の体験を避ける傾向があり、予定調和の世界を好むかもしれません。成長を追求しない人は、自分の現状に満足し、目標を設定して積極的に努力するよりも、目先の喜びや快楽を大切にし、自分をストレスから解放することを重視します。これらの経験が価値であり、個人にとって心地よさや幸福感をもたらす重要な要素となるのです。

また、人は異なる状況や心境によって、同じ体験でも価値の感じ方が異なることがあります。例えば、旅行先でのアクティビティは、元気で活発な気分の時と、疲れてリラックスしたい時では、体験価値が異なるかもしれません。

体験価値をデザインする

マーケティングの観点からは、顧客のマインドセットを理解し、彼らの価値観や好みに合ったエクスペリエンスを提供することが重要です。体験価値を高めるためには、顧客の感情に訴えかけるコンテンツやコミュニケーション、良好な接客態度などが役立ちます。顧客が良い体験を得た場合は、商品やサービスへの忠誠心やブランドのイメージの向上につながり、企業にとっても競争上の優位性をもたらすことが期待されます。

したがって、体験価値をデザインするためには、顧客の感情や満足度を重視し、良いエクスペリエンスを提供するための戦略を構築することが重要です。以下は、体験価値をデザインする際の一般的な手順です。

顧客のニーズを理解する

まずは顧客のニーズや希望を深く理解することが必要です。ターゲットとなる顧客の目標や要望、痛点を把握し、彼らが何を求めているのかを明確にすることで、適切な体験をデザインする基盤ができます。

顧客の旅(カスタマージャーニー)をマッピングする

顧客の体験を始めから終わりまでの旅(ジャーニー)としてマッピングし、顧客と接触できるタッチポイントを把握します。広告、検索、ウェブサイトから購入、サポート体制まで、全体のフローを把握することで、改善すべきポイントやエクスペリエンスを高めるチャンスを見つけることができます。

エンゲージメントを促す要素を導入する

顧客の興味を引き、エンゲージメントを促す要素をデザインに取り入れます。例えば、ストーリーテリングやインタラクティブな要素、感情的なコンテンツなどを活用して、顧客を魅了する体験を提供します。

ユーザビリティとシンプルさを重視する

体験価値を高めるためには、シンプルで使いやすいデザインが重要です。ユーザビリティを考慮し、顧客がスムーズに操作できるようにすることで、不快な体験を避けます。

パーソナライズされた体験を提供する

顧客の個別のニーズに合わせて、パーソナライズされた体験を提供します。顧客の過去の行動履歴や好みに基づいて、特別なオファーや推薦を提供することで、顧客との関係を深めることができます。

フィードバックの収集と改善

顧客のフィードバックを積極的に収集し、体験の改善に活用します。顧客の声を反映させることで、より良い体験を提供するための改善サイクルを確立します。

このように、体験価値をデザインする際には、顧客の視点を重視し、感情や満足度を考慮したユーザーエクスペリエンスを提供することが成功の鍵となります。

体験価値と向き合うことがブランド価値向上のカギ

体験価値と向き合うことは、顧客との関係を強化し、ブランド価値を高める上で非常に重要です。顧客が良い体験を得ることで、ブランドに対する忠誠心が高まり、リピート購入や口コミ拡散につながることが期待されます。

ビジネスが体験価値と向き合うためには、顧客のニーズや希望を理解し、そのニーズに合った体験を提供することが大切です。顧客中心のアプローチを取ることで、顧客にとって重要な要素を把握し、体験価値を高めることができます。

また、商品やサービスの提供だけでなく、顧客が触れるすべてのタッチポイントにおいて、エクスペリエンスのデザインに取り組むことも重要です。ウェブサイトやアプリの使いやすさ、店舗の雰囲気、サポート体制など、顧客の体験を向上させる工夫を行います。

さらに、体験価値を向上させるためには、常にイノベーションに取り組むことが必要です。競合他社との差別化を図り、新しい価値を創造することで、顧客に魅力的な体験を提供します。

Summary

ビジネスが体験価値と向き合う上で、顧客のフィードバックを積極的に収集し、改善に反映させることも重要です。顧客とのコミュニケーションを大切にし、顧客の声を反映させることで、体験価値を向上させるサイクルを確立します。

 

最後に、ビジネスが体験価値を重視するためには、全社的な意識の向上が必要です。
そのためには従業員全員が顧客の視点を持ち、体験価値向上に取り組むことが重要です。従業員の教育やトレーニングにより、サービス提供の品質向上を図ります。これらのアプローチを通じて、持続的な成長と競争上の優位性を築くことができるでしょう。