BLOG

ブログ

最適な「ユーザーシナリオ」について考える

Webサービスや製品の制作において、重視されるもののひとつにUX(ユーザーエクスペリエンス)があります。
UXとはユーザーがサービスを利用することで得られる体験のことを指します。
デバイスが急速に進化し、ユーザーとの関わり方が大きく変化した現代において、UXの重要性は高まる一方です。
このUXをより良いものにするために必要なのが「ユーザーシナリオ」です。

目次

  1. ユーザーシナリオとは
  2. ユーザーシナリオを作る目的
  3. カスタマージャーニーとの違い
  4. シナリオなしではUIが作れない
  5. まとめ

ユーザーシナリオとは

ユーザーシナリオとはサービスや製品の提供者が描く、ユーザーの理想的な行動シナリオを指します。
ユーザーがどんな目的でWebサイトに訪問し、目的達成のためにどんな流れで閲覧するかを予測することで、戦略を練ることができます。
ユーザーシナリオについて考えるときに、前提となるのがペルソナの存在です。
ペルソナとはWebサービスを利用する理想の顧客モデルを指し、年齢や性別のみならず、価値観や仕事の内容などパーソナルな面まで細かく設定されます。
例えば、「ここまで来たユーザは、前提として〜の情報を得ているはずだから、この場面で選択肢を提示する」「こちらを選択するのは、重視する価値感が〜だからで、別の選択の場合は〜を重視するタイプだから」というように、客観的事実に基づく観測からシナリオ構築を行うためには、具体的な個性を持つ人物像=ペルソナの設定が必要であることがご理解いただけますでしょうか。 コミュニケーションの対象となるユーザーが定まっていないと具体的なシナリオは作ることができないので、ペルソナとなる人物像を炙り出した上で、シナリオ設計に入りましょう。

この時に注意したいのが、事実ベースでペルソナを作成することです。
担当者の主観が入ってしまうと、どうしても供給側に都合の良いペルソナ(ゴムのユーザー)が出来上がってしまいます。
※「ゴムのユーザー」とはゴムが引っ張られるままに伸び縮みすることを例えに、サービスの作り手に都合よく生み出されたペルソナを揶揄するワードです。
「ユーザーはこう動くべき」「これを選択してほしい」など、作り手側の論理や希望、あるいは「私ならこうする」と自身の主観で考えてしまう事は意外と多いですし、「こういうユーザーもいる、ああいうユーザーもいる」と様々なタイプのユーザーを一緒くたにして、あらゆる行動を取る可能性のある非現実的なペルソナを描いてしまうケースも散見されます。
ペルソナは、メインとサブの2タイプくらいに分けて整理し、人格として矛盾しない人物像を設定しておくことが肝要です。

ユーザーシナリオを作る目的

ユーザーの属性や行動傾向、判断基準を把握しユーザーシナリオを作成することで、サービスの供給側は具体的な施策を決定できます。
どのような顧客接点があり、ユーザーにどのようにメッセージを伝えるのか、その結果として引き出される心理や行動に対して、どのようにアプローチすると事業成果につながっていくのか。現実的なコミュニケーションプランの土台となるのが、ユーザシナリオです。

ユーザーシナリオを描くことで、ユーザーとの接触に最適なメディアとメッセージの選択が可能になります。
例えば、顧客接点を見つけたい場合。リスティング広告がよいのか、SEOに力を入れた方が良いのか、PRを活用した方が効果的なのか…あるいはイベントで直接接触をするのが良いか、など。ユーザーシナリオを描くことで、最適なメディアの選択が可能になります。
WEBサイト制作においては、ページのワイヤーフレームでの情報構造の設計や視覚的なデザインを決める際にも必要でしょう。

このように、マーケティングプランを実行する上では極めて重要なユーザーシナリオですが、ほかに重要な役割が2つあります。
これもマーケティングプランの成否に影響するところなので、しっかりと確認しておきましょう。

ユーザーへの理解を深める

ユーザーシナリオを作る事による効果のひとつは、ユーザーへの理解をより深められることです。
良いシナリオをつくるにはユーザーへの理解を深めることが第一です。ユーザーの思考や心理、行動に目を向け、観察し、分析し、きちんとコミュニケーションが成立するようにシナリオを作成することは、良いシナリオの要件のひとつです。
ユーザーは普段、何を見て何を聴き、どんな言葉を発しているのか。本質的には何を求めていて、何を恐れているのか。そのような観察と分析する事は、ユーザーを深く理解する事につながります。 とりわけサービスの運営側は目先のCV(売上)にとらわれてしまいがちです。数字が伸びているうちはあまり気に止めないかもしれませんが、ユーザーの気持ちに目を向けずに売上追求した結果、いつのまにかユーザーの気持ちが離れてしまい数字が悪化…という事例は枚挙にいとまがありません。 ユーザーの心理を理解し、マーケティングコミュニケーションを通じてWin-Winの関係を築くことは、持続的な事業成長の施策を考える上で重要なファクターとなります。 WEBサイトであれば、どのようなニーズから訪問契機を捉えたのか、どのページを基点としてCVに至ったのか、などコミュニケーションの経路が可視化され、その経路で何が起きているのかを、ユーザシナリオに沿って評価する事も、ユーザーへの理解に繋がるでしょう。 CVはコミュニケーションの結果の数字であって、数値の裏側にあるユーザーの気持ちに目を向ける事が大切です。NPS調査などで、顧客の声を可視化することも、ユーザー理解を深める方法のひとつです。

サービス制作に関わる関係者と共通の認識を持つことができる

ユーザーシナリオを作ることで、サービスの制作に携わるすべての人と認識が共有できます。
制作関係者内での意識共有はもとより、クライアントと認識を共有できることが大きな利点です。
カスタマージャーニーマップなどを利用して、ユーザーの行動を可視化することで、課題抽出や対策を論理的に導きやすくなります。
主観的な思いつきからの物言いが多い会議が紛糾して話がまとまらないばかりか、行き当たりばったりの施策になりがちで、PDCAが回りません。
ユーザーシナリオを明確にして共有することで、制作関係者をはじめ、クライアントにも向かうべき方向性がイメージしやすくなり、客観的な判断が下しやすくなります。

カスタマージャーニーマップとの違い

ユーザーシナリオと意味が混同されるワードに「カスタマージャーニーマップ」があります。
先の段落でカスタマージャーニーマップという言葉がありましたが、カスタマージャニーマップはユーザーシナリオの概念に内包されるものです。
ユーザーシナリオは文字通り台本、筋書きであり、それを可視化する方法のひとつがカスタマージャーニーマップです。
筋書きにのせて、顧客の行動をプロットし、そこでおきる体験や心理変容を可視化する事を主な目的として使用するものです。

とりわけ、パルス消費の行動モデルで提言されてるように、認知から興味を深掘りする情報収集には思ったように移らないことも多く、購買に繋がらない接触が延々と続いたり、次のステージへ移ってから前のステージに戻ったりするなど、一見不可解な(シナリオ通りに進まない)ユーザー行動を客観的に理解する上でも、このような可視化は有効でしょう。

シナリオなしではUIが作れない

UXとセットで語られることの多いUIですが、これはUser Interfaceの略称です。
単に見た目のことだと捉えられがちですが、言葉を分解していくとinter(間)face(顔)であり、 顔と顔との間、つまり意思疎通を媒介するものがInterFaceであり、コンピューターと人間の意思疎通を媒介するのがUser Interfaceです。

コンピューターとのInterFaceとなると、OSのUIやアプリケーションソフトのUIなどに代表されますが、これらを人間がより使いやすく、よりスムーズな意思疎通を助けるという文脈で語られているのがUI/UXであると言えます。
これには、機能の理解を助けるボタンやナビゲーション類、各情報のまとまりとレイアウト、配色やフォントの視認性や操作結果を知らせるフィードバックなどあらゆる視覚(デバイスによっては振動など体感)要素が含まれます。
それ故に、UX(ユーザーエクスペリエンス|ユーザー体験)とUIが合わさってUI/UXと呼ばれるのでしょう。

コンピューターインターフェースとしてUI/UXの場合は、OSやアプリケーションソフトのユーザーが特定の利用目的を達成するユーザーシナリオを基にしたUIの設計という事になりますが、マーケティングの文脈では顧客体験(CX|Customer Experience)を産み出すためのUIという意味になりますから、主にWEBサイトに訪れたユーザーが目的を達成するためのユーザーシナリオに即した導線設計がUI設計という事になります。もちろん、ショッピングカートや問い合わせフォームなどの機能部分では、コンピューターインターフェースとしてのUI設計も含まれます。
いずれにしても、ユーザーシナリオでのペルソナが基となり、コンピュータを扱う事の練度などから操作のしやすさや理解のしやすさなどを考え、サイト訪問の切っ掛けや目的から、最適な情報配置を考える必要があり、これらがUI設計に落とし込まれていくのです。

ですから、UIを作り込む際には、その目的として「求められるUXを生み出すこと」があるわけです。これは、前提としてユーザーシナリオが明確になっている、ということを意味します。

まとめ

現在のWebサービスの評価は、すべてUXに集約されると言っても過言ではありません。
ユーザーの心理と行動の仮説からUI/UXを企画し、実際のユーザー行動のデータから、行動の意図を探り、分析と改善を重ねた先にユーザーに支持されるUXが生み出されます。

良いUXの定義は人によって異なりますが、理想的なUXとは「ストレスなく目的を達成すること」であり、そのユーザーの行動レベルに溶け込んでおり、普段はそれが「生み出されたユーザー体験」であることにすら気づきません。
そんな理想的なユーザー体験のためにシナリオが存在します。

制作会社に企画する際には、まずユーザーシナリオを描いておくと良いでしょう。 企画・設計やデザインの良し悪しを判断する上でも、重要な「モノサシ」になる事は間違いありません。