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勝てる局面はどこにある?STP分析で勝機を見いだす

STP分析(Segmentation, Targeting, Positioning)は、市場調査と市場セグメンテーションに基づいて、マーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。STP分析を使用すると、企業は顧客を異なるセグメントに分け、それぞれのセグメントに最適な商品やサービスを提供することができます。
以下では、STP分析の各要素について詳しく説明します。

セグメンテーション(Segmentation)

セグメンテーションは、市場をより小さな部分に分割するプロセスです。顧客のニーズ、特性、行動、購買パターンなどを考慮して、共通の特徴を持つグループにセグメントを作成します。セグメンテーションの目的は、異なるセグメントの顧客のニーズや要求を理解し、それに基づいてマーケティング戦略を最適化することです。

セグメンテーションの方法にはいくつかのアプローチがあります。一般的な方法は主に4つで、ジオグラフィックセグメンテーション(地域、国、都市など)、デモグラフィックセグメンテーション(年齢、性別、収入など)、行動セグメンテーション(購買パターン、利用頻度など)、サイコグラフィックセグメンテーション(興味、態度、ライフスタイルなど)があります。

ターゲティング(Targeting)

セグメンテーションの結果に基づいて、最も魅力的なセグメントまたは複数のセグメントを選択することがターゲティングです。ターゲットセグメントは、企業の製品やサービスに最も適した顧客であり、企業のリソースを最大限に活用することができるセグメントです。

ターゲティングの際には、選択したセグメントの大きさ、成長性、収益性、競争状況などの要素を考慮する必要があります。また、選択したターゲットセグメントに合わせて、マーケティングのメッセージやチャネルを選択することも重要です。

ポジショニング(Positioning)

選択したターゲットセグメントに対して、競合他社との差別化された価値提案を提供するための戦略を策定します。ポジショニングにより、顧客に対して自社の製品やサービスの独自性や付加価値を伝え、競争優位性を確立することが目的です。

ポジショニングのためには、顧客のニーズや要求を理解し、競合他社の製品やサービスとの比較を行う必要があります。顧客にとって魅力的なポジショニングを達成するために、価格、品質、利便性、ブランドイメージ、顧客サービスなどの要素を考慮します。

STP分析は、マーケティング戦略を策定する際に非常に有用なフレームワークです。市場のセグメンテーションを通じて、顧客の多様なニーズを理解し、ターゲットセグメントを選択し、それに基づいて差別化されたポジショニングを実現することができます。

セグメンテーションとターゲティングの例

実際の市場ではさまざまな要素を組み合わせてセグメンテーションを行うことがあります。セグメンテーションは企業にとって顧客の多様性を理解し、ターゲットセグメントに対して的確なマーケティング戦略を展開するための重要な手法です。
まず、先に挙げたセグメンテーションの4タイプについて掘り下げていきましょう。

ジオグラフィックセグメンテーション

地理的な要素に基づいて市場をセグメント化する方法です。例えば、国、地域、都市、気候帯などの地理的な要素によって顧客をグループ分けします。地理的セグメンテーションは、地域ごとの消費習慣や文化の違いを考慮し、市場エリアごとに適切なマーケティング戦略を展開するのに役立ちます。

デモグラフィックセグメンテーション

人口統計データに基づいて市場をセグメント化する方法です。年齢、性別、収入、職業、教育レベル、家族構成などのデモグラフィックな要素を考慮して顧客をグループ分けします。デモグラフィックセグメンテーションは、異なる顧客のニーズや購買行動の違いを把握し、それに合わせたターゲティングとマーケティングメッセージを展開するのに役立ちます。

行動セグメンテーション

顧客の購買行動や利用パターンに基づいて市場をセグメント化する方法です。顧客の購買頻度、購買金額、商品の使用方法、ブランド忠誠度などの行動要素を考慮して顧客をグループ分けします。行動セグメンテーションは、顧客の購買パターンやニーズの類似性に着目し、特定のセグメントに対して効果的なプロモーションや提案を行うのに役立ちます。

サイコグラフィックセグメンテーション

顧客の興味、態度、価値観、ライフスタイルなどの心理的要素に基づいて市場をセグメント化する方法です。顧客の人格特性や感情的な要素を考慮して顧客をグループ分けします。サイコグラフィックセグメンテーションは、顧客の好みや嗜好に合わせたプロダクトデザインやマーケティングメッセージを提供するのに役立ちます。

セグメンテーションの例

ここでは、サイコグラフィックなセグメントの具体例を考えてみましょう。
国産ウナギの通販をしている会社が、購入する人を調査してセグメンテーションした場合を考えてみましょう。結果、購入者を以下のようなタイプに分類ができました。

グルメ愛好家

高品質な食材を求める食通やグルメ愛好家。彼らは料理にこだわりを持ち、ウナギの美味しさや特徴に敏感です。彼らには、新鮮で上質なウナギを提供することや、料理のレシピや提案を提供することが重要です。

健康志向の人

健康や栄養面を重視する人々。ウナギは高タンパクで栄養価が高い食材であり、特にビタミンやミネラル、オメガ-3脂肪酸を含んでいます。健康志向の人々には、ウナギの栄養価や健康効果を強調し、バランスの取れた食事の一部として提案することが効果的です。

エンターテイメント愛好家

料理や食材に対してエンターテイメント性を求める人々。ウナギは調理法によってさまざまな料理にアレンジできるため、料理のアイデアやレシピを提供することで彼らの関心を引くことができます。また、ウナギの歴史や文化的背景についても情報を提供することで、興味を持って購買に繋げることができます。

忙しい専業主婦

時間が限られている主婦。彼女たちは手軽に美味しい料理を作りたいと考えており、調理済みのウナギは食卓に出すまでが比較的簡単な食材です。彼女たちには、簡単で時短な調理法やウナギの調理済み製品を提供することが魅力的です。

ターゲティングの例

セグメントの中から、最も有望で収益性の高いセグメントを特定することがターゲティングの重要な一部です。先のウナギの例であれば、高収益をもたらすグルメ愛好家や健康志向の人を優先的にターゲットとすることが戦略的な選択となる場合、2つのセグメントがターゲットとなります。

ターゲティングは、企業のマーケティングリソースを最適化し、効果的なマーケティング活動を展開するための重要なステップです。適切なターゲットセグメントの選択により、マーケットでの競争優位性を確立し、より成功した結果を得ることが期待されます。

ターゲットに自社が選ばれるためのポジショニング

ポジショニングは、選択したターゲットセグメントに対して競合優位性を提供するための差別化を図ることです。
競合と同じポジションを取る場合、自社が選ばれるためには明確な優位性を打ち出す必要があります。
競合と異なるポジションを取る場合、自社が独自の特長を持ち、顧客に対して他社とは異なる価値提案を行う必要があります。これによって、自社の製品やサービスが他社とは異なる選択肢として認識され、競合との差別化が可能になります。

セグメンテーションに基づいて、顧客のニーズや要求を理解し、それに合わせたユニークな価値提案を行うことで、顧客の心に響くポジションを獲得することが重要です。

ポジショニングのアプローチ

次に、ポジショニングのアプローチについても考えてみましょう。

ニーズに対する独自の解決策
顧客のニーズや要求に焦点を当て、他社が提供していない独自の解決策を提供します。顧客のニーズを深く理解し、他社がカバーしていない領域にフォーカスすることで、自社の差別化を図ることができます。

高品質・高性能の提供
競合とは異なり、より高品質や高性能の製品やサービスを提供することで、顧客に対して付加価値を提供します。高品質な製品や優れた機能性は、顧客にとって差別化の要素となります。

価格戦略の違い
競合とは異なる価格帯や価格戦略を採用することで、異なるセグメントの顧客にアプローチすることができます。価格だけでなく、価値と価格のバランスを重視することで、競合との差別化を図ることができます。

ブランドイメージやメッセージの差異化
他社とは異なるブランドイメージやマーケティングメッセージを打ち出すことで、独自性を強調します。ブランドのストーリーやビジョンを明確にし、顧客に訴求することで、競合との差別化を図ることができます。

ポジショニングの例

先ほどのセグメンテーション/ターゲティングの例に基づいて、ウナギの通販事業におけるポジショニングの例を考えてみます。

高品質とグルメ体験

ターゲットセグメントがグルメ愛好家である場合、ウナギの通販事業は高品質なウナギと充実したグルメ体験を提供することに焦点を当てることができます。国産ウナギの鮮度や質を強調し、独自の調理法やレシピの提供、印象的なブランド名称やプレミアムなパッケージやサービスを提供することで、顧客に高級感や満足感を与えるポジションを築きます。

健康と栄養価

健康志向の人々をターゲットにしている場合、ウナギの通販事業は健康と栄養価にフォーカスし、差別化を図ります。
ウナギの栄養価や健康効果(例:豊富なタンパク質、ビタミン、ミネラル)を強調し、バランスの取れた食事の一部としての重要性を伝えます。また、栄養価を損なわないための製法上の工夫や配送方法なども大切です。他にも健康を意識したレシピや料理の提案、低脂肪やヘルシーな調理方法を提供することで、健康志向の顧客に対して魅力的なポジションを獲得します。

Summary

ここまで見てきたように、STP分析は、自社分析と競合分析を行った後に実施することで、より戦略的な洞察を得ることができます。

自社分析では、自社の強みや弱み、リソース、能力、ブランドイメージなどを評価します。一方、競合分析では、他社の製品やサービス、マーケティング戦略、顧客のニーズへの対応などを評価します。これらの分析によって、自社の現状と競合環境を把握することができます。

 

その後、STP分析を実施することで、より具体的にセグメントを特定し、ターゲットセグメントにおける自社の優位性を見極めることができます。セグメンテーションに基づいて、顧客のニーズや要求を理解し、他社と比較して自社の差別化ポイントを把握することが重要です。

 

また、STP分析は、現状の優位性の欠如を明らかにするだけでなく、どのような戦略やアクションを実行すれば優位性を獲得できるかを示す手がかりともなります。顧客ニーズの変化や市場のトレンドを分析し、セグメントにおいて競争優位性を持つための戦略を立案することができます。

 

自社分析、競合分析、そしてSTP分析を組み合わせることで、マーケティング戦略の策定や競争優位性の創出においてより戦略的な洞察を得ることができます。これにより、より効果的なアクションプランの立案や競合環境への適応が可能となります。