プランニング

事業構想と戦略のアウトライン

事業において、何か新しい取り組みを始めようとするとき、必要になるのが事業構想と戦略です。行き当たりばったりの思いつきで始めて大成功、という可能性はゼロではないにしても、ある程度の目算を立ててスタートする事の方が一般的でしょう。
経営者は、事業が成功する可能性はどの程度あるのか、リスクはどの程度あるのかなどを事前に評価し、意思決定します。したがって、会社が何か新事業を始める際には、経営的に判断できる材料をあらかじめ用意する必要があります。
本稿では、新規事業の成功に不可欠な事業構想と戦略について、概要的にまとめます。

事業構想とは

まず事業構想とは、新しいビジネスを立ち上げるために考える全体の計画やアイデアのことを指します。事業構想は、ビジネスの目的やビジョン、ターゲット市場、提供する製品やサービス、収益モデルなど、ビジネスの基本的な要素を包括的に考えることが重要です。

構想から実現までのプロセス

事業構想を描くところから、アイデアを実現するための計画を行い、実現し目標を達成するまでの大まかなイメージをつかみましょう。
まずは下のような構造で全体像を把握します。

  • 頂点|ビジョン実現
  • 4段目|評価と改善
  • 3段目|行動計画
  • 2段目|目標設定
  • 1段目|事業戦
  • 土台|事業構想

土台から積み上げていくように、事業構想で描いたビジョンを実現に向かわせると考えると、やるやるべき事と順序が把握しやすいのではないでしょうか。

ビジョン実現のための事業活動のモデル図

事業構想のプロセスと手法

新さまざまな考え方があると思いますが、まずは成功の可能性やリスクを評価し、事前に経営的な判断を行う必要があります。以下に、その評価に役立つ材料や手法をいくつか挙げます。

事業構想の構造的把握

このパートでも、事業構想の全体像を把握しやすいように、構造化してみましょう。
さまざまな考え方や手法があると思いますが、概ね以下のように構造化できるのではないでしょうか。

頂点:ビジョン/ミッションの明確化 4段目;客観的評価 3段目:ビジネスモデル策定 2段目:収益性/リスクの予測 1段目;マーケットリサーチ 土台:目的とアイデア
事業構想のモデル図
  • 頂点|ビジョン/ミッションの明確化
  • 4段目|客観的評価
  • 3段目|ビジネスモデル策定
  • 2段目|収益性/リスクの予測
  • 1段目|マーケットリサーチ
  • 土台|目的とアイデア

目的とアイデア

目的とアイデアは、事業構想の出発点となる要素です。目的を明確にし、具体的なアイデアやビジネスの方向性を構築します。

マーケットリサーチ

新しい事業を始める前に、市場リサーチを実施します。これによって、競合状況、市場の需要と成長の見通し、顧客のニーズや行動パターンなどを把握し理解することができます。市場リサーチによって、事業の成功の可能性やリスクをより具体的に評価することができます。

収益性/リスクの予測

新しい事業の収益性を評価するために、収益モデルを構築し収益予測を行います。費用と収益を見積もり、利益や収益成長の見通しを把握します。これによって、事業が収益を上げる可能性やリターンオンインベストメント(ROI)を評価することができます。

オンラインの事業であれば、予測されるトラフィック量や標準的な転換率を用いることで得られる収支予測や、年ごとの顧客増減の見込みから将来的な収益を評価する階段図などを用います、

また、​​新しい事業にはリスクが存在します。市場リスク、技術リスク、財務リスク、競合リスクなどがあります。これらのリスクを評価し、可能性と影響度を考慮しながらリスク管理策を策定します。リスク評価は、経営者がリスクを把握し、事業計画を適切に修正するための重要な要素です。リスクマトリックスやSWOT分析などの手法が用いられます。

ビジネスモデル策定:ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンパス

リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスは、どちらもビジネスの概要を整理し、ビジネスモデルの設計や評価を支援するツールです。

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの構造や要素をビジュアルに整理するツールです。ビジネスの鍵となる要素を明確にし、収益モデル、顧客セグメント、価値提案、チャネル、リソース、パートナーなどを評価します。これによって、事業の論理性や収益性を評価することができます。

リーンキャンパスは、ビジネスモデルキャンパスからスタートアップに不要な項目を廃した簡潔なモデルです。れぞれの特性や利点に応じて、どちらを使用するかは状況や個人の好みによります。

客観的評価:フィードバックと検証

新しい事業を開始する前に、ビジネスアイデアや戦略を関係者やアドバイザーと共有し、フィードバックを得ることも重要です。また、実証実験やプロトタイプの作成を通じて、事業の仮説を検証することができます。これによって、事業の成功要因や課題を把握し、戦略を適切に調整することができます。

戦略とは

戦略は事業構想を実行に移すために必要な調査と計画を指します。事業構想は将来のビジネスの方向性や目標を定めるものですが、戦略はそれを実現するための具体的な手段や計画を立てるプロセスです。

戦略の構造的把握

端的に言うと戦いに勝つ事が戦略の目的です。戦略は、目標の達成や競争優位の確保を目指して行われる計画や行動の体系です。
組織や個人が戦略を策定する際、主な目的は競争相手や市場の変化に対して有利な位置を確立し、成功を収めることです。戦略は競争力を強化し、ビジネス目標や成果の達成を支援するための手段として利用されます。
さまざまな考え方や手法がありますが、我々が推奨するCXデザインの考えでは、以下のような構造になるかと思います。

頂点:ブランドの確立

4段目:コミュニケーションの最適化

3段目:選ばれる理由の明確化

2段目;顧客の選択

1段目:ドメイン/市場の選択

土台:ビジョン/ミッションの明確化
CXデザイン戦略のモデル図
  • 頂点:ブランドの確立
  • 4段目:コミュニケーションの最適化
  • 3段目:選ばれる理由の明確化
  • 2段目;顧客の選択
  • 1段目:ドメイン/市場の選択
  • 土台:ビジョン/ミッションの明確化

土台には事業構想で明確にしたビジョン/ミッションを置いています。
次に、この戦略の構造について、各段階の説明を詳しく述べます。

ビジョン/ミッションの明確化

ビジョンとミッションは組織の基盤となる要素であり、戦略の根幹を形成します。ビジョンは組織の将来の状態や目標を示し、ミッションは組織の存在意義や役割を定義します。

ドメイン/市場の選択

ドメインや市場の選択は、組織が活動する領域やターゲット市場を明確にする段階です。組織の強みやリソースを考慮し、競争力を持つドメインや市場を特定します。

顧客の選択

顧客の選択は、ターゲットとする顧客セグメントを特定する段階です。顧客のニーズや要求を理解し、それに応えることができる特定の顧客を選択します。

選ばれる理由の明確化

選ばれる理由の明確化は、顧客が組織を選ぶ理由や独自性を明確にする段階です。顧客価値提供のポイントや競争上の優位性を特定し、差別化を図ります。

コミュニケーションの最適化

コミュニケーションの最適化は、組織が顧客や市場に向けて効果的にメッセージを伝えるための段階です。適切なチャネルやコミュニケーション戦略を選択し、ブランドイメージや価値を効果的に伝えます。

ブランドの確立

ブランドの確立は、組織の信頼性や認知度を高めるための段階です。ブランドのアイデンティティやイメージを築き、組織の独自性を顧客や市場に示します。CXデザイン戦略では、ビジョンの実現に向けて不可欠な要素です。

Summary

ここまで、事業構想と戦略について、ザックリとまとめてみました。
事業構想と戦略のプロセスは、経営者や組織がビジネスの成功を追求するために重要な手段です。事業構想ではビジョンやミッションを明確化し、市場や顧客のニーズを把握します。戦略では、リスク評価や収益性の予測を行い、ビジネスモデルを策定して競争力を確保します。そして、コミュニケーションやブランドの確立を通じてビジネスの成果を最大化します。
ただし、事業構想と戦略は静的なものではありません。環境の変化や新たな課題に対応するために、常に見直しや改善が必要です。継続的なモニタリングと修正を通じて、事業の成長と競争優位の維持を図ることが重要です。