知識

CXデザインとデータサイエンス

データサイエンスは、消費者の心理変容を捉えるために非常に有用なツールや手法を提供することができます。
当社でも、顧客の態度変容のトリガーを可視化・生成するツール「CX-Finder」を開発していますが、このツールのデータ処理は、データサイエンスの観点から行われています。
それでは、CXデザインがデータサイエンスをどのように援用しているか、そして、デザインとデータサイエンスの共通目的および相違する点について、私なりの考えをまとめてみました。
CXデザインについては、他にも記事を書いているので合わせてご覧ください。

データサイエンスとは

データサイエンスとは、データを収集し、分析して有益な情報や洞察を引き出す学問や実践のことです。データサイエンスでは、大量のデータを統計的な手法や機械学習を使って解析し、パターンや傾向を見つけ出すことが目的です。それにより、現象の理解や予測、意思決定のサポートを行うことができます。データサイエンスは、ビジネスや科学、医療、マーケティングなどのさまざまな領域で活用されています。

デザインの立場から見て、デザインとデータサイエンスが目指すところには多分に共通点があります。ですから、この両者が結びついていくのは自然なことではあるのですが、スキルセットの違いゆえに相互に理解されていない事も多いように思います。

データサイエンスで導き出されるデータはデザイン的な直感と必ずしも一致しないため、デザイン側がデータサイエンスを正しく理解しないという事はよくある話であり、また逆にデザインの美的感性を説明変数に含める事が困難である場合、データサイエンスの立場からデザインの重要な側面を正しく評価することができない、というような事も起こり得るでしょう。

顧客行動の分析と最適化

CXデザインにおいては、データサイエンスは非常に重要な役割を果たします。顧客の行動をデータ化することで、アクセス解析ツールやDMP、MAツール、広告の最適化などさまざまな場面で活用されています。

ユーザーの行動分析

データサイエンスを活用して、ウェブサイトやアプリのユーザーの行動データを分析します。クリックログや購買履歴などのデータを解析し、ユーザーの行動パターンや嗜好を把握します。こうすることで、ユーザーがどのようなコンテンツに関心を持ち、どのようなアクションを取るかを理解し、マーケティング戦略やコンテンツ改善に役立てることができます。サイトやアプリ内の行動解析としてはGoogle Analyticsの利用が最も一般的でしょう。他にもMicrosoft Clarityのようなヒートマップツール、Similer Web や Dockpitといった大規模なリサーチエンジンなどもありますね。

パーソナライズされた体験の提供

ユーザーに対してパーソナライズされた体験を提供することも、データサイエンスの手法を活用しています。ユーザーの過去の行動や好みに基づいて、個別にカスタマイズされたコンテンツ、商品の推薦、広告の配信などを行います。これにより、ユーザーのエンゲージメントやコンバージョン率を向上させることができます。

A/Bテストと最適化

異なるデザインやコンテンツのバリエーションを比較するA/Bテストもデータサイエンスを用いています。統計的な手法による信頼性のレベルに応じて、必要なサンプルサイズを推定します。最適なバージョンを選択することができます。データの分析を通じて、どのバリエーションがユーザーにより効果的であるかを判断し、改善策を見つけ出します。

チャネル効果の評価

異なるマーケティングチャネルの効果を評価するためにも利用されます。ウェブアナリティクスやクロスチャネルデータの分析により、各チャネルの貢献度や相互作用を理解し、予算の最適化やマーケティング施策の改善を行うことができます。

データサイエンスを活用することで、WEBマーケティングの効果を最大化し、より戦略的かつ効率的なマーケティング活動を行うことができます。

デザインとデータサイエンスの共通点と相違点

デザインのロジックとデータサイエンスは相性が良い面がありますが、それぞれにも違いが存在します。以下に、デザインのロジックとデータサイエンスの相性の良い点と違いについて説明します。

【相性の良い点】

問題解決のアプローチ

デザインのロジックとデータサイエンスは、問題解決に対するアプローチが似ています。どちらもユーザー中心のアプローチを取り、ユーザーのニーズや課題を理解し、それに対する解決策を提供することを目指しています。

ユーザーエクスペリエンスの向上

デザインのロジックとデータサイエンスは、ユーザーエクスペリエンスの向上に貢献することができます。デザインのロジックは、ユーザーが製品やサービスを使いやすく、魅力的に感じるようなデザインを追求します。一方、データサイエンスはユーザーの行動や嗜好を分析し、パーソナライズされた体験や推薦を提供することで、ユーザーの満足度を高めることができます。

データに基づく洞察

デザインのロジックとデータサイエンスは、データに基づいた洞察を得ることができます。デザインのロジックでは、ユーザーの反応やフィードバックを通じてデザインを改善することがあります。データサイエンスでは、消費者の行動やトレンドをデータから分析し、洞察を得ることができます。

【違い】

アプローチの焦点

デザインのロジックは、感性や美的な要素に焦点を当てており、ユーザーの感情や体験を重視します。一方、データサイエンスはデータ分析と統計的な手法に焦点を当てており、客観的な洞察や予測を提供します。

必要なスキルセット

デザインのロジックには、視覚デザイン、感情設計、ユーザビリティデザインなどのスキルセットが含まれます。また、「ブランドの世界観」など抽象的な要件を含み、総合的・立体的にアウトプットを導く事が要求されます。

一方、データサイエンスにはデータ分析、統計、プログラミングなどの専門知識やスキルセットが必要ですし、データを適切に評価するためのビジネス的な視点も要求されるでしょう。

情報の取得方法

デザインのロジックでは、ユーザーのフィードバックやインタビューなどの質的な情報収集方法を通じて、ユーザーの意見やニーズ、好みなどを把握することが一般的です。デザイナーは主にユーザーとの対話や直感を通じてデザインに関する判断を行います。

データサイエンスでは、主に量的なデータの分析と解釈を通じて情報を得ます。データサイエンティストは、ウェブサイトやアプリの利用データやユーザーの行動データを収集し、統計的な手法や機械学習などの分析手法を用いて、データから傾向やパターンを抽出します。

データサイエンスによる情報収集では、クリックログ、購買履歴、アクセス履歴、セッションデータなどの量的なデータを解析します。これにより、ユーザーの行動パターンや嗜好、関心領域などを把握することが可能です。データサイエンスの手法を用いることで、データから客観的な洞察や傾向を導き出し、意思決定の根拠とすることができます。

Summary

デザインのロジックとデータサイエンスは異なる情報収集方法とアプローチを持ちながらも、相互補完的な役割を果たしています。デザインのロジックでは主観的な要素やユーザーの直接のフィードバックを重視し、データサイエンスではデータに基づいた客観的な洞察を追求します。両者を組み合わせることで、より総合的な視点でユーザーのニーズを理解し、優れたデザインや効果的なマーケティング戦略の策定に活用することができます。
それぞれの特性を活かすことで、より優れたユーザーエクスペリエンスや効果的な問題解決が可能となり、突きぬけた成果を生み出す原動力となり得ます。

ビジネスの発展には的確なデータ評価とクリエイティビティの両面が必要だと思います。
データサイエンスを正しく援用できるデザイナーをパートナーにすることは、今後ビジネスを飛躍させる最も重要な要素となるでしょう。