知識

CXデザイナーとUI/UXデザイナーが市場に求められる理由

以前、UXデザインの潮流がデザイナーに要求するもの、というコラムを書きました。

 

このコラムではUXデザインとUXデザイナー、WEBデザイナーやWEBに携わるグラフィックデザイナーを対置して評したのですが、UXデザイナーを含め、2000年以降の高度化したデジタライゼーション時代に登場したデザイン領域を専門とする仕事やデザイナーについてまとめてみたいと思います。

 

デザイン業界の進化と変化に関する洞察を得る一助になれば幸いです。

デジタルとデザインをつなぐ様々な専門家

以下に、2000年以降のデジタルデザイン領域に関連するさまざまな専門家や役割の一部を挙げてみます。調べたまんまなので、身の回りにこんな専門家いないねーなのも入ってますし、デザイナーやエンジニアが一部その役割を担ってるねー的なものもあります。

CXデザイナー(Customer Experience Designer)

顧客体験を設計し、改善するために専門的に働くデザイナーです。CXデザイナーは、顧客が企業やブランドとの触れ合い全体でどのような体験を得るかを考慮し、その体験を向上させるための戦略やデザインを策定します。

CXデザイナーは、ユーザーエクスペリエンス(UX)デザインや顧客サービス、マーケティングなどの分野を横断的に結びつけながら、総合的な顧客体験を設計・管理します。

UI/UXデザイナー(UI/UX Designer)

ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の両方に関するデザインを担当する専門家です。彼らはアプリケーションやウェブサイトの外観(UIデザイン)だけでなく、ユーザーがそのプロダクトやサービスをどのように使用し、体験するか(UXデザイン)も考慮します。UI/UXデザイナーは、デザイン要素、ナビゲーション、ユーザーフロー、ユーザーテストなど、幅広いスキルと知識を持つことが求められます。

UIデザイナー(UI Designer)

UIデザイナーは、主にユーザーインターフェース(UI)のデザインに特化した専門家です。彼らはアプリケーションやウェブサイトのビジュアル要素、レイアウト、色、アイコンなどのデザインを担当します。UIデザイナーは、ユーザーが直接触れる部分のデザインを通じて、魅力的で使いやすいインターフェースを作成する役割を果たします。

UXデザイナー(UX Designer)

主にユーザーエクスペリエンス(UX)のデザインに焦点を当てた専門家です。彼らはユーザーのニーズや目標を理解し、プロダクトやサービスの使用体験を最適化するために、ユーザーリサーチ、ユーザーフローの設計、ユーザーテストなどを行います。UXデザイナーは、ユーザーがシームレスで効果的な体験を得ることを確保するために、ユーザーセンタードなアプローチを取ります。

情報アーキテクト(Information Architect, IA)

IAはデジタルプロダクトやウェブサイトなどの情報構造を設計する専門家です。彼らはユーザーが情報を探しやすく、理解しやすいようにするために、情報の階層化や組織化、ナビゲーションの設計などを行います。IAの設計は、ウェブサイトやアプリケーションのユーザーエクスペリエンス全体に影響を与えるため、デジタルデザインにおいて非常に重要な要素です。

デジタルアートディレクター(Digital Art Director)

ウェブサイト、アプリケーション、デジタル広告などのプロジェクトでビジュアルデザインを指揮します。クリエイティブなビジョンを具現化し、デザインチームをリードします。

インタラクションデザイナー(Interaction Designer)

ユーザーとデジタルプロダクトの間の相互作用をデザインします。ユーザーが操作する際のフロー、トランジション、アニメーションなどを設計します。

デジタルストラテジスト(Digital Strategist)

デジタルプロジェクトやキャンペーンの戦略を計画します。ターゲットオーディエンス、コンテンツ戦略、チャネル選定などを考慮し、ビジネス目標を達成するためのプランを立てます。

モーションデザイナー(Motion Designer)

モーションデザイナーは、アニメーションや動きをデザインする専門家です。ウェブサイト、アプリケーション、広告などで動きを使って情報を伝える役割を果たします。

デジタルマーケティングデザイナー(Digital Marketing Designer)

デジタルマーケティングデザイナーは、デジタル広告やコンテンツを制作し、オンラインでのブランドプレゼンスを向上させる役割を担当します。

UI/UXデザイナーはUIデザイナーとUXデザイナーの上位互換か

UI/UXデザイナーは、UIデザイナーとUXデザイナーの上位互換っぽい雰囲気ですが、両方の専門性を統合した役割と言えるでしょう。UI/UXデザイナーは、UIデザインとUXデザインの両方に関するスキルと知識を持つため、単に上位互換というよりは、両方の専門性を包括的にカバーする役割と言えます。

UIデザイナーとUXデザイナーは専門性が異なる

UIデザイナーとUXデザイナーは、それぞれ特定の側面に焦点を当てているため、彼らのスキルセットと専門知識は異なります。一方、UI/UXデザイナーは、UIデザインとUXデザインの両面を汲み取りながら、ユーザーエクスペリエンスをより総合的に考慮します。彼らは外観だけでなく、ユーザーがそのプロダクトやサービスをどのように使用し、どのような体験を得るかも重要視します。

UI/UXデザイナーの役割

UIデザインとUXデザインの専門家が協力して作業することに比べて、UI/UXデザイナーは一人のデザイナーが両方の側面を統合して担当することができる利点を持ちます。ただし、プロジェクトの要件やチームの構成によって、どのようなデザイナーの役割が求められるかは異なることがあります。最終的には、プロジェクトの目標とニーズに基づいて最適なアプローチを選択することが重要です。

UI/UXデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナーのそれぞれは、異なるスキルセットと専門知識を持っています。以下は、それぞれのスキルセットに関する説明です。

UI/UXデザイナーのスキルセット

UIデザインとUXデザインの両方の側面に関するスキルを持つことが求められます。彼らは外観と体験の両方をバランスよく考慮し、ユーザーが魅力的で使いやすいアプリケーションやウェブサイトを作成するために幅広いスキルを活用します。UIデザインのスキル(色、アイコン、レイアウトなど)とUXデザインのスキル(ユーザーリサーチ、ユーザーフローの設計、プロトタイピングなど)の両方を組み合わせます。

UIデザイナーのスキルセット

ソフトウェアインターフェースとビジュアルデザインに特化したスキルセットを持ちます。UIデザイナーには、アプリケーションやウェブサイトの外観やレイアウトをデザインするための色彩感覚、タイポグラフィ、アイコンの選定、インタラクションデザイン、グラフィックデザインなどのスキルが求められます。UIデザイナーの主な焦点は、ユーザーが直接対話する機能的部分のビジュアル要素を使いやすく、美しく魅力的にデザインすることです。

UXデザイナーのスキルセット

ユーザーエクスペリエンスに焦点を当てたスキルセットを持ちます。彼らはユーザーのニーズや行動パターンを理解し、それに基づいて使いやすいプロダクトやサービスをデザインするためのユーザーリサーチ、ユーザーフローの設計、ユーザーテストなどのスキルを持ちます。UXデザイナーは、ユーザーがシームレスで意義のある体験を得ることを追求します。

UI/UXデザイナーと似ている?IA(情報アーキテクト)の仕事とは

UI/UXデザイナーに近い感じがする仕事にIA(情報アーキテクト)があります。IAもUX向上を目的としてWEBサイト設計などを行う専門家です。

IA(情報アーキテクト)とUI/UXデザイナーは関連性があり、一部のタスクや要素が重なることがあります。しかし、実際にはそれぞれ異なる専門性を持つ役割です。例えば…の話で、個人差がありそうではありますが、以下にそれぞれの役割の関係性と違いを説明します。

IA(情報アーキテクト)とUI/UXデザイナーの関連性

  1. 情報の組織と階層化
    IAは情報の構造化と階層化を担当し、ユーザーが情報を探しやすくする役割を果たします。これはUI/UXデザイナーがユーザーエクスペリエンスを向上させるために重要な要素であり、両者の共通点となります。
  1. ナビゲーションの設計
    IAはメニューやナビゲーションの設計を行い、UI/UXデザイナーも同様の要素をデザインすることがあります。ユーザーがサイト内を効果的に移動できるようにするためのデザインは、両者の役割で共通して重要です。

IA(情報アーキテクト)とUI/UXデザイナーの違い

  1. フォーカスの違い
    IAは主に情報の組織とナビゲーションに焦点を当てる一方、UI/UXデザイナーはユーザーインターフェース全体とユーザーエクスペリエンスに焦点を当てます。
  2. デザイン要素
    UI/UXデザイナーは外観やビジュアルデザイン、アイコン、色彩などをデザインする一方、IAは情報の構造や階層、カテゴリーの設計に重点を置きます。
  3. ユーザーエクスペリエンスの拡大
    UI/UXデザイナーはユーザーエクスペリエンス全体を設計する役割を果たし、IAはアプリケーションやウェブサイト内での操作やインタラクションに焦点を当てます。

このように、IAとUI/UXデザイナーは両者の連携によって、ユーザーエクスペリエンスの向上に貢献することができるというわけです。

CXデザイナーはUI/UXデザイナーとは毛色が異なる…が

CXとUXなので近しい感じがしてしまいますが、CXデザイナーとUI/UXデザイナーは、役割や焦点が異なるため、実は結構毛色が異なる職務になります。以下にそれぞれの違いを説明します。

仕事の焦点

  • CXデザイナーは、顧客全体の体験を設計する役割です。デジタルプロダクトやウェブサイトだけでなく、顧客が企業との接点全体での体験を考慮します。
  • UI/UXデザイナーは、主にデジタルプロダクトやウェブサイトのユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンスを設計する役割です。

スコープ

  • CXデザイナーは、カスタマージャーニー全体を設計し、ブランドと顧客の関係を向上させるためにブランド一貫性や顧客の感情を考慮します。
  • UI/UXデザイナーは、主にアプリケーションやウェブサイト内での操作やインタラクションに焦点を当て、インターフェースのデザイン、ユーザーフロー、ユーザーテストなどを担当します。

アプローチ

  • CXデザイナーは、感情やエンゲージメントの向上、カスタマーフィードバックの活用、オムニチャネル体験の調整など、幅広い要素を考慮して体験をデザインします。
  • UI/UXデザイナーは、ユーザーのニーズや行動に基づいて、使いやすいデザインを作成し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるためにデザインプロセスを実施します。

CXデザイナーはUI/UXデザイナーと異なる視点から、より広範な領域をカバーし、ブランドと顧客の関係性をデザインするための専門家です。両者はプロジェクトやチームによって異なる側面を担当することもありますが、基本的な違いは上記の通りです。

CXデザイナーの要素がUI/UXデザイナーにも求められる

ところが、「毛色が違う」だけでは片付かないのが、UXデザインの中身の問題です。

UXデザインの潮流が、デザイナーに要求するもの

の中でも触れたのですが、

UXデザイナーないしUI/UXデザイナーには、必然的にブランディングやマーケティングの知識が必要になります。

その理由は、以下のような要因によるものです。

一貫性の維持

ユーザーエクスペリエンスは、製品やサービスだけでなく、ブランド全体との関係性も重要です。デザインがブランドのアイデンティティやメッセージと一致していることは、一貫性を保つために不可欠です。

ブランド価値の伝達

ユーザーエクスペリエンスデザインは、ブランドの価値観や使命をユーザーに伝える手段です。デザインの選択やコミュニケーションは、ブランドの意図を表現するために重要です。

顧客の期待に応える

ユーザーはブランドに対して特定の期待を持っています。マーケティングとブランディングの知識を持つことで、これらの期待に適切に応えるためのデザインが可能です。

競争優位の構築

マーケットで差別化するために、ブランドの独自性を訴求するデザインが必要です。ブランディングとマーケティングの知識によって、他社との差別化を実現するデザイン戦略が立てられます。

コンバージョンとエンゲージメントの向上

マーケティングの知識を活用して、デザインがユーザーのコンバージョン(目標達成)やエンゲージメント(関与度)を向上させる方法を考えることが重要です。

加えて、データマネジメント能力も必要に

データマネジメント能力は、UXデザイナーやUI/UXデザイナーにとって重要なスキルの一つです。データに基づく意思決定と改善は、ユーザーエクスペリエンスの向上やデザインの効果測定において不可欠です。
なぜデータマネジメント能力が求められるのかを説明します。

データ分析

データマネジメント能力を持つことで、ユーザーの行動やパターンを分析し、デザインの弱点や改善点を特定することができます。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上に向けた具体的なアクションを実施できます。

ユーザーリサーチ

データマネジメント能力は、ユーザーリサーチのデータを収集し整理する際にも役立ちます。リサーチ結果から洞察を得て、デザインの意思決定をサポートします。

ABテストやユーザーテスト

データを活用したABテストやユーザーテストは、デザインの効果を評価するための方法です。データマネジメント能力によって、テストの計画、データ収集、分析が効果的に行えます。

ユーザーエクスペリエンスの最適化

ユーザーの行動データやフィードバックを元に、デザインの改善と最適化を行うためには、データを適切にマネジメントして活用する能力が重要です。

ビジネス成果の評価

データを用いて、デザインの変更がビジネス目標にどのように影響を与えているかを評価することができます。ROI(投資対効果)を評価する際にもデータは重要な要素です。

データマネジメント能力は、デザインプロセス全体でデータを収集・分析・活用する能力を指します。これによって、デザインの合理的な意思決定とユーザーエクスペリエンスの向上が実現できます。

したがって、UXデザイナーやUI/UXデザイナーが成功するためには、単にインターフェースのデザインだけでなく、ブランディングとマーケティングの基本原則についても理解し、その知識とデータを活用する能力が必要になります。ユーザーエクスペリエンスを向上させ、企業の目標達成に貢献することが求められるのです。

なぜいま、UI/UXデザイナーやCXデザイナーが市場に求められるのか

UI/UXデザイナーやCXデザイナーが市場で求められる理由は、デジタルテクノロジーの進化と顧客中心のアプローチが重要視されるようになったためです。最後に、要点をまとめます。

ユーザーエクスペリエンスの重要性

ユーザーエクスペリエンスがビジネスの成功に大きな影響を与えると認識されています。使いやすい、魅力的なデザインは、顧客の満足度や忠誠心を向上させ、競争優位を築くために欠かせません。

デジタルプロダクトの増加

ウェブアプリ、モバイルアプリ、IoTデバイスなど、デジタルプロダクトの種類と数が急増しています。これに伴い、ユーザーエクスペリエンスの設計がますます重要となっています。

競争激化

顧客は世界中から様々な選択肢が増える中で、さらに良好なユーザーエクスペリエンスを求めています。企業は良質なデザインを提供して、顧客を引き付け、留める必要があります。

ブランド価値の向上

ユーザーエクスペリエンスはブランド価値と密接に関連しています。良好なエクスペリエンスは、ブランドのポジティブな評判や信頼性を向上させます。

データドリブンのデザイン

データの収集と分析が容易になり、データを活用したデザインや改善が行いやすくなりました。UXデザインやCXデザインに精通していることは、データに基づく意思決定を効果的に進化させます。

顧客中心のアプローチ

顧客のニーズや要求を優先し、顧客に価値を提供するアプローチが広がっています。UI/UXデザイナーやCXデザイナーは、この顧客中心のアプローチを実現するための役割を果たします。

これらの理由から、UI/UXデザイナーやCXデザイナーは、ビジネスが顧客に価値を提供し、成功を収めるために不可欠な存在となっています。

Summary

UI/UXデザインは、単にウェブデザインよりも幅広いスキルセットを必要とするだけでなく、ユーザーエクスペリエンス全体を設計し、デジタルプロダクトやサービスを成功に導く能力を求められる分野です。

 

UI/UXデザインに挑戦する際には、現在のデザインスキルが土台になります。関連するスキルと知識を習得し、新たな価値提供に目を向け実践することで、市場価値を向上させることができます。最終的な選択は個人の興味や目標によるものですが、UI/UXデザイナーへの転身は、現代のデザイン市場での自己価値向上の一つの方法と言えるでしょう。