プランニング

バックキャスティング|構想から実現に向かうデザイン技術

バックキャスティング(Backcasting)は、将来のビジョンや目標を立てる際に、逆算的なアプローチを用いてその実現可能性を探求する手法です。未来の具体的な目標を設定し、その目標を達成するために現在から過去に逆算することで、未来の実現可能性を探求する手法です。

 

バックキャスティングが未来からの逆算であるならば、現在から未来への予測計算も存在します。これはフォアキャスティング(Forecasting)と言われます。天気予報は英語でweather forecastなので、ピンとくるかと思います。
フォアキャスティングは、過去のデータや傾向をもとにして未来の出来事や現象を予測する手法です。
いずれも事業計画をはじめ、マーケティングやブランディングの計画に利用する技法です。本稿ではバックキャスティングを中心にご紹介します。

バックキャスティングとフォアキャスティング

バックキャスティングとフォアキャスティングは、どちらも未来を予測する手法ですが、アプローチや使用するデータの方向性などに違いがあります。以下にそれぞれの主な違いをまとめてみます。

バックキャスティングの特長

アプローチの方向性

バックキャスティングは、未来の目標を設定し、その目標を達成するために現在から過去に逆算するアプローチです。具体的な目標を設定し、現在の状況から目標を達成するための戦略や手段を考えることが中心です。

関心領域

持続可能性や気候変動対策など、将来の望ましい状態に関連するテーマで広く使用されます。具体的な目標を達成するための論理的な手段を考えることが重要です。

フォアキャスティングの特長

アプローチの方向性

フォアキャスティングは、過去のデータをもとに未来の出来事を予測するアプローチです。過去の傾向やパターンを分析して、将来の事象を推測します。未来の予測が主な焦点です。

関心領域

ビジネス予測、経済予測、気象予測など、将来の予測が重要なテーマで活用されます。目標達成よりも、予測精度や不確実性の理解が重要です。

バックキャスティングは未来の目標を設定し、現在から過去に向けて逆算して目標達成のための戦略を考える手法です。一方、フォアキャスティングは過去のデータを利用して未来の出来事を予測する手法で、目標達成よりも未来の予測精度が主な焦点となります。両者は異なるアプローチですが、どちらも将来を理解し、合理的な意思決定や戦略立案に役立つ重要なツールです。

バックキャスティングの例

バックキャスティングは、近年では主に持続可能な未来を実現するための手法として、さまざまな分野で活用されています。
例えば、環境保護の領域では、2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロ)を達成する目標を掲げる場合、その達成には再生可能エネルギーの普及、エネルギー効率の向上、持続可能な交通システムの整備などが必要です。
バックキャスティングを用いて、現在の技術と制度を考慮し、具体的な手段やステップを逆算することで、目標達成に向けたロードマップが描けます。

また、ビジネス戦略の立案でも有用です。企業が将来的な市場リーダーになるためには、イノベーションやサービスの提供が不可欠ですが、バックキャスティングを活用して、その成長を支えるためのリソースや競争戦略を逆算することで、持続的な成長を実現するプランが構築できます。
バックキャスティングは、未来の目標に向けて適切な戦略を立てるための強力な手法であり、持続可能な発展や効果的な戦略の策定に貢献しています。

事業計画でのバックキャスティング

将来の目標が重要である事業計画においても、バックキャスティングを活用することがあります。次のような点でバックキャスティングが有用と考えられます。

目標設定

事業計画の初めに、将来の特定の時点で達成したい目標を設定します。これは企業の成長目標、収益目標、市場シェアの拡大など様々なものが考えられます。

戦略立案

バックキャスティングでは、目標を達成するためにどのような戦略を採用すべきかを考えます。現在の状況から逆算して、目標達成に向けた道筋を描くことが重要です。

必要なリソース

目標を達成するためにはどのようなリソースが必要かをバックキャスティングによって洗い出します。資金、人材、技術、パートナーシップなどの要件を評価し、適切なリソースの確保を計画します。

環境の変化への適応

ビジネス環境は常に変化するため、バックキャスティングを用いて将来の変化にどのように適応するかを考慮します。新たな競合他社、市場の変化、技術の進化などを予測して対応策を検討します。

リスク評価

バックキャスティングは、事業計画におけるリスクを洗い出すのにも役立ちます。目標達成において遭遇するかもしれない障害や不確実性を把握し、それに対する対策を立てます。

バックキャスティングによって、事業計画はより現実的で実現可能性の高いものになる可能性があります。目標を達成するためのロードマップを明確にし、リソースの適切な配置や環境変化への適応を考慮することで、企業の成功に向けた戦略的な計画を立てることができます。

ブランドを創造するためのバックキャスティング

事業計画と同様に、未来のブランド像から逆算して施策を組み立てるアプローチはバックキャスティングの例として考えられます。

ブランド戦略においても、将来の望むブランド像やブランドのポジションを設定し、その実現に向けて逆算的に現在の施策を立てることが重要です。

具体的には、ブランドの理念やバリューを明確化し、そのブランドイメージを未来の目標として設定します。そして、そのブランドイメージを実現するために、現在から必要な戦略や施策を逆算して計画します。
顧客ニーズの把握や競合分析、市場動向の調査などを行い、未来のブランド像を支える具体的なアクションを設計することで、ブランドの成長と発展を促進します。

バックキャスティングは、ブランド戦略の立案において、将来のビジョンを明確にし、それに向けて着実に進むための計画立案に役立つ重要な手法となります。

Summary

バックキャスティングはデザインの技法の一つとして捉えることができます。デザインには様々な手法やアプローチがあり、バックキャスティングもその中の一つです。

 

デザインにおいては、目標やビジョンを明確にし、それを達成するための戦略やアクションを立案することが重要です。バックキャスティングは、将来の目標を設定し、その目標を達成するために現在から過去に逆算する手法であり、デザインの過程においても非常に有用です。

 

例えば、製品やサービスのデザインにおいて、将来の顧客体験を具体的に想像し、その体験を実現するためにどのような要素を組み込むかを逆算してデザインすることがあります。また、ブランドデザインの立案においても、将来のブランドイメージを設定し、そのイメージを実現するためのデザイン要素を逆算して組み込むことが考えられます。

 

バックキャスティングは、デザインにおいて未来を具体的に描き、それを実現するためのプランニングや戦略を考える際に役立つ手法として利用されます。デザインの過程において、バックキャスティングを活用することで、より具体的で効果的なデザインが生まれる可能性が高まります。